「ほろよい読書」再びお酒が飲みたくなる短編集

お酒にまつわる短編集。Audibleで。

「ほろよい読書」

https://m.media-amazon.com/images/I/41rHZBqgMaL.jpg

Amazon.co.jp

5人の作家によるアンソロジー。後先になりましたが続編にあたる「おかわり」を先にいただいていましたw

minonoblog.hatenablog.com

「おかわり」同様にそれぞれの作家が各々異なったシチュエーションで異なるお酒に関わるお話を紡いでいる一冊。

今回も主人公は様々。大好きな叔母の為に彼女の「初恋」と思われる男性に会いに行く女の子。果実酒づくりにハマっている一人暮らしアラフォー女性、老舗酒造の跡取りであるいとこ同士、夫の家出した理由が知りたくて夫行きつけの定食屋で働き始める妻、保育園保護者たちのリモート飲み会に参加させられたシングルのバーテンダー、などなど。

どのお話も設定も「オチ」もすんなり飲み込める作品でしたが、敢えて一つ取り上げるとするなら、原田ひ香氏の「定食屋雑」。

派遣の仕事をしながらも一切手を抜かずにご飯の用意をしていた妻。しかし夫は残業だ何だと言い訳をしつつ近所の定食屋で夕食を食べビールを飲んで帰って来る。それを責めると「離婚したい」と家出されてしまうのです。

実は妻の実家では父親は食事の後にナッツ等でスコッチを嗜むような家庭だったらしく、ご飯を食べながらビールを飲むなど考えられなかったようです。

え、そんな事が別れる理由になるの?と思いがち。しかし食事って案外大事な部分。お互い主張したり妥協したりしながら「落としどころ」を見つけていく家庭全般のプロセスの最初の一歩もあるんですね。

夫の行きつけの定食屋で働いて彼の趣味嗜好を理解し自分の押し付けがましさを悟ったまでは良かったけれど、夫に対して「あなたの食べ方も許してあげるから」と上から目線で切り出してしまう妻。そんな態度が夫は最後まで許せないんです。

あぁこれだからダメなんだなぁ…と側から見れば冷静にわかるものですが、さて自分はどうなんだろう、と考えてしまいました。

夫婦って何年たってもわからないことはあるものの、歩み寄る努力は幾つになっても大事なんだな、と今更ながら思った次第。

ビールに日本酒に果実酒…今回もいろいろお酒が出てきましたが、本書であまりに美味しそうだったので、今まで苦手で手を出さなかったチョコレートボンボンを買ってみようかな、と思います。