ベイビー・ブローカーを観て

昨日観に行ったお目当てはこれでした。

「ベイビー・ブローカー」

画像:引用 映画.com https://eiga.com/movie/93673/special/

予告編を見た時から「あーソン・ガンホが出てる!IUが出てる!」と楽しみにしていた作品。

赤ちゃんポストに捨てられた赤ん坊を横流して売買する、という重いテーマですが、赤ちゃんを捨てた母親、売人、それを追う警察と、それぞれの視点から話は淡々と進んでいきます。

「ブローカー」は、実は自分も親に捨てられ施設で育った過去がある男だったり、妻と離婚して子供に会えないおじさんだったりとそれぞれに背景があり、決して「悪人」として設定されていません。赤ちゃんを扱う場面に「人柄の良さ」がにじみ出てるんです。

子供の母親も勿論事情を抱えている。その彼らが、施設から逃げ出した男の子を交えて一緒に里親探しの旅に出ます。全く血の繋がらない人間が家族のように生活するのは、「万引き家族」に似てますね。「万引き家族」の方は本だけ読んだのですが、映画もこんな感じだったのかな、と。

いずれ手放すことがわかっている為か、話しかけたりあやしたりといったことをしない母親が、赤ちゃんと二人きりの時は歌をうたいながらオムツを替えるシーンがあり、さりげなく子供に対する想いが伝わってきます。

そんな母親を無責任として糾弾していた女性警察官も、母親への理解を深めていくように。結局誰もが他人を思いやる優しい人たちばかりなのです。

韓国映画ではあるけれど是枝監督が撮ったからなのか、全体的に静かに畳み掛ける流れが日本映画のように感じられます。これは韓国の監督ならまた違ったんでしょう。ヤクザの組長云々とあるので、リアリティーを追求することが多い韓国ならもっと血生臭い場面も多くなっていたかもしれません。そう考えると(それはそれで良かったかもしれないけれど)やはり是枝監督で正解だったのでは、と思います。

ソン・ガンホは大きい体で小さな赤ちゃんを上手に抱いて、「子供に愛情深い人」を感じられてとても良かった。カンヌで受賞したのもよくわかります。毎回期待を裏切らないな、という印象。勝手に韓国の役所広司と呼んでます(風貌からは西田敏行の方が近い?)

韓国ドラマをあまり多く観ないので「女優」のイメージが強くなかったのですが、IU(イ・ジウン)の母親も、最初は心閉ざしていたのが次第に「擬似家族」の中で心が解けていく様子で、その繊細な表情が印象的でした。この人歌もあんなに上手くて人気があって演技までできて…もう無敵な気がする…

映画としては「え、そうなるの?」と思うところもあるのですが、もう俳優陣みんなよかったからやっぱり◯という事で。