ダーク・ウォーターズ

ファースト・デイ(毎月1日)という事で贅沢にも又行ってきました、映画館。今週はシアワセ…

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男」

画像:引用 映画.com  https://eiga.com/movie/92287/critic/

大手化学メーカー、デュポン社の廃棄物により工場周辺の環境が汚染された事を受け、住民を原告団とした集団訴訟を起こした件と、それに携わった弁護士のお話です。

「大企業の水質汚染を弁護士事務所の一個人が暴く」という実話を基にした映画と聞けば、思い出すのが「エリン・ブロコビッチ」(つい「マルコビッチ」と間違えてしまう…)。

ジュリア・ロバーツが大会社に挑む子持ちのシングルマザーを演じ「勧善懲悪」のドラマだった事に比べると、本作は一貫して画面もダークブルーのトーンで最後まで大きな盛り上がりはなく、感動のガッツポーズも無し。物足りない印象を受けるかもしれません。

でも大企業を相手に膨大な資料を基に真実を突き詰めていく姿は、ヒーロー然としたスポットの当て方とは違って、「クライアントの依頼に応える」という弁護士の基本姿勢を愚直に守る主人公の生き様そのもの。和解案に応じずあくまで戦う、という依頼人の真意を理解し尊重することからもよくわかります。

主人公の戦いは依頼を受けてから実に20年以上にも及びます。こんな長い戦いが可能だったのは、彼の真摯な人柄もさることながら周囲の協力も大きな要因の一つ。殆ど本件に専念し事務所の業績に貢献も見えないのにクビにしないばかりか、本来大手クライアントとなる企業相手の訴訟にも理解を示す上司。度重なる減給があっても(いろいろ文句は言いつつも)側で支える奥さん。彼らの存在があることで、主人公の控え目ながら真面目で頑固な内面がより浮き彫りとなっていくようです。

本作で主演と製作を兼ねたマーク・ラファロ。先の米大統領選でも積極的にコメントしていたことからもこういった社会派のテーマに関心が深い事は伺えます。今回もモデルとなった弁護士に何度も会い出来るだけ本人に近づけるようにしたそうで、彼の本作への熱量が感じられます。うつむき加減に眉間に皺を寄せる表情は、ゴッドファーザーの時のマーロン・ブランドを彷彿とさせて渋いです。

訴訟は今も継続中らしくモデルの弁護士は今も関与されているとの事ですが、企業名も実名で扱う本作はそれだけ製作する側の本気度が伺えます。依頼人は既に亡くなられていたようですが、モデルの弁護士夫妻や汚染の被害者など何人かは実際に出演されています。

ちなみに本作で訴訟の対象となったPFOAという有害物質は、本訴訟のおかげで、現在ではテフロン加工には使用されていないそうです。フライパン、安心して使えそうですね。