「紫式部と藤原道長」大河ドラマを思い浮かべつつ史実に忠実な解説を楽しむ

毎年大河ドラマを見ています。今回は平安時代、特に紫式部をモデルとしているとの事で、昨年あたりから関連の本やイベントが多くなったような。個人的にここらあたりは非常に知識が乏しいので少しでも参考になるといいかな、と。Audibleで。

紫式部藤原道長」 倉本一宏 著

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無官で貧しい学者の娘である紫式部が何故世界最高峰と言われる作品を執筆することができたのか。大河ドラマ「光る君へ」時代考証担当の一人である著者が、日本史上でも最大の権力者と思われる藤原道長との関係性に焦点をおいて、あくまで史実に基づき開設した一冊。

著者が冒頭でも言及しているように、本書は紫式部藤原道長の関係を確実な資料のみによって復元し、その接点や交流についてもできるだけ可能性を探るものであって、無責任な憶測は避けるもの、としており、徹底して一次資料に則った記述と思われます。

なので中身が面白ければ史実はどうでも良いと言う人はドラマや小説を楽しんでいただければいい、と言うコメントも。

著者自身は、戦国時代のように迫力ある合戦が舞台になるわけでもなく、権力闘争がメインとなるような平安時代はおよそ大河ドラマには取り上げられない、と思っていたらしく、今回紫式部道長にスポットが当てられた事に非常に喜んだそうで、その一方でドラマが史実とかけ離れていくいく事に危惧を抱いているようです。

具体的には、ドラマでは恋仲の二人である設定ですが、著者が調べる限りではそのような史実は考えられないそうな。

ドラマの時代考証を担当されている著者。どのようなお気持ちでドラマをご覧になっているのでしょう。

この他にもドラマのストーリーとはちょっと違うニュアンスがあったり、イメージが異なる登場人物があったりと、これはこれで面白く、自分としては一層ドラマが楽しめるような気がしました。

たとえ恋人同士ではないにせよ、当時(和歌ほどには)注目されていなかった小説を書き続けるには、道長という大きなサポートを必要としていた紫式部と、小説の力を最大限に利用して自らの地位と家を守ろうとした道長。互いに無くてはならない存在であった事は間違いないようです。

道長との関係性以外にも、「源氏物語」の最古の文学としての価値と重要性を繰り返す著者。小説でも何でもいいので(但し「正しい解釈に基づくもの」)是非全文読んでみることを推奨されています。しかし約800首の和歌が謳われている古典の物語。歌の良さが分からなければお話の真髄は理解できないのでは?非常に悩ましいけれどいつか読破を試みたいと思っています。