「常設展示室」読む美術館巡りです

旅行中に暇があったら読もうと思っていたら行きの車中で読んでしまいました。ごく薄い本ですが、美術館を巡っているような感覚で。

「常設展示室。 原田マハ 著

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6つの絵画を巡るオムニバス。世界的に有名な作品であったり隠れた名画であったり、もしくは何か訳ありな絵であったり。それぞれ苦さや甘さを感じる結末のお話ではあるのだけれど、一貫して伝わるのは著者の絵画に対する深い洞察のようなものです。

それは著者自身がキュレーターとして仕事をしていた事もあるのでしょうが、何よりアートに対する愛情やリスペクトが感じられるのです。

よく知らないままだったので公式ウェブサイトを見てみると、大学は文学部卒業後(なんと先輩でした)美術館やアート関連の仕事に就きつつ、キュレーターを目指し早稲田の美術史科で学芸員の資格を取得されたそうで、ここまでくると愛情というよりも執念のようなものを感じてしまいます。

キュレーターを経て作家となってからは「史実をベースとしたフィクション」を中心に活動されている著者。公式サイトのプロフィールを目にした後では一層読みたくなる著書ばかりです。

さて本作。絵画やアートに絡めた各短編には、特別展示のように大々的な派手さはなくつい見過ごしてしまいがちな常設の展示物のように、日々に埋もれてしまっているような場面に光が当てられているような印象を受けます。

作品自体も素晴らしいのですが、単行本の帯にコメントされている上白石萌音ちゃんの解説も相当な熱量を感じる文章。本作はお母様からプレゼントされてあまりに感動したので「是非読んで」と逆にお母様にオススメしたそう。解説も飾らない素直な感想が綴られていて「萌音ちゃんっていい子なんだな」とつい親目線になってしまいました。

そんな訳なので単行本の解説込みでお勧めしたい一冊。萌音ちゃんの「美術館巡りが趣味となった」というのが納得できるし、私自身更に美術館に行くのが好きになったので。