「君たちはどう生きるか」久しぶりの宮崎駿ワールド

アカデミー賞効果なのかロングラン上映。そういえば前作「風立ちぬ」も劇場にジブリ好きの娘と劇場に観に行ったっけ。今回は一人で鑑賞。

君たちはどう生きるか

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映画.com

太平洋戦争、空襲で母親を亡くした眞人(まひと)は、軍需工場経営者の父親とともに郊外へ疎開。眞人の父は母の妹ナツコと再婚し、3人はナツコの実家である屋敷で暮らしはじめたが、眞人は既に妊娠しているナツコとの生活にも新しい学校にもうまくなじめずにいた。

ある日突然姿を消したナツコを探して屋敷の一角にある塔に足を踏み入れる眞人は、屋敷を彷徨い人間の言葉を話す謎のアオサギと共に、不思議な世界へと迷い込む。

久しぶりの宮崎駿作品。彼のファンではないものの、風のざわめきや木々の揺らぎ、木漏れ日などの自然の細かな描写や、登場人物の眼差しや物腰の丁寧な描き方を観ると、「あぁ宮崎駿だな」と感じます。

3時間を超える大作が多い中、2時間強の本作はコンパクトにまとめられていた筈ですが、異世界に入り込んだあたりからまさに夢の中にいるような感覚(要するに寝落ち)で、若干の中弛み感はありました。

しかしその異世界こそが宮崎駿のイマジネーションの世界。「千と千尋」を彷彿とさせる摩訶不思議な「あちら側」から、いかに「こちら側」に継母を救って生還できるか、少年の冒険劇を観ているかのよう。

勿論単なる冒険活劇に終わらせないのが宮崎作品。時間軸と階層を行き来しながら、主人公が人として成長する過程を表す以外にもメッセージがあるようにも。

本作の時代設定は第二次世界大戦。しかし戦火の悲惨さが見られるのは冒頭のみで、以降戦時中とは思えない牧歌的な風景が最後まで続きます。これは徹底して戦時の悲壮感が前面にでた「火垂るの墓」とは対照的です。

更に「あちら側」である「下の世界」の住人である眞人の大叔父から「(これから火の海になるような世界に)帰りたいか?」と問われるも、元の世界に戻ることを選ぶ主人公の少年。

それはガザ侵攻やウクライナ問題など今なお人の争いは絶え間ない世界であっても、決して希望が絶える事はない、という次世代へ託された監督の伝言のように感じます。

世界には宮崎ファンが多くネットをググれば様々な考察を目にすることが出来るので、自分の感想と照らし合わせるのも又別の楽しみ方かも。

一切の事前広告や予告放映が無かった本作。コアファンの期待は裏切らなかったのではないでしょうか。

声優キャストも豪華。最後のクレジットで初めて気が付くくらい菅田将暉クンは違和感無かったです。あと貫禄あるこの声誰だろうと思ったのは火野正平さんでした。さすがベテラン。キムタクは…最後までやはりキムタクでした…