「風の向こうへ駆け抜けろ」騎手の世界をスポーツエンタメで

タイトルから連想される通りに青春モノでした。Audibleにて。

風の向こうへ駆け抜けろ」 古内一絵 著

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厳しい騎手養成所での過程を経て無事卒業した瑞穂は、地方競馬場にある緑川厩舎に迎え入れられる。しかしそこは「藻屑の漂流先」と揶揄され経営が成り立たず今にも潰れそうな弱小厩舎で、調教師を始め皆やる気のない人間ばかり。地方かつ弱小であるが故嫌がらせを受け強い競走馬も得られず困り果てていたところへ、虐待により心身ともに弱っていた一頭の馬に出会う。

競馬の事は全くわからなかった為、単純に興味本位で読み始めました。女性騎手が希少で地方競馬は中央に比べ運営が困難、というのは何とはなく想像通りでしたが、馬を育てる厩務員の視点もあり、人間と馬の関係性も知れて面白かったです。

競馬というまさに男社会の中で志高く挑む若い女性騎手と、その存在を「アイドル化」して利用しようとする経営側。如何にもな展開ではありますが、外野の声に惑わされつつも真摯に取り組む主人公と、それに呼応して一丸となって行く厩舎面々の姿には、素直に清々しさを感じます。あまり読まないけれどスポーツエンタメ系の小説もたまにはいいかな、と思ってしまいました。

特にレースでの駆け引きのシーン。車やバイクと違い「生身」である馬を相手に勝負に出る難しさや緊迫感がやはり本作の肝だと思われます。

簡単に勝てて万歳とならないところも、未来を感じるラストに繋がって爽やか。所詮賭け事の世界という見方がある事も想定の上で、前面に出された爽快感が心地よく感じられました。

変に恋愛がらみなところがないのも良かったな、と思っていたら、どうも続編でそういう展開になるような。残念な気もするけれど話膨らまそうとすると自ずとそうなるのでしょうね…

何にでも影響されてしまう私。是非ともサラブレッドの疾走を見てみたくなったので、春の桜花賞で競馬場デビューを密かに目論んでいます。