「コントラクト・キラー」サスペンスというよりもいつも通りのシュールなコメディ

アキ・カウリスマキ監督作品。いつも通りすっとぼけて入るものの、今回はサスペンス要素が。でもあんまりハラハラしなかったけれど。アマプラで。

コントラクトキラー」

https://eiga.k-img.com/images/movie/12299/photo/8d7928a3fd44b3af/640.jpg?1695889595

映画.com

ロンドンで働くフランス人のレオ。周囲とはそれほど溶け込んでは以内が真面目に勤務する毎日。しかし長年実直に務めていたにもかかわらず、ある日突然に解雇を言い渡され人生に絶望した彼は、自殺を試みるもうまくいかず、広告で知った殺し屋に自分の殺害を依頼することに。しかしその夜カフェで知り合った花売り娘に恋をしたレオは死ぬのが嫌になり依頼をキャンセルしようとするが、以来先の事務所はなくなっており…

あらすじをたどっているだけで、何だかいかにもカウリスマキ監督らしい喜劇が期待できそうな雰囲気。そしてその機体は裏切られることはありません。

死ぬほどこの世を哀れんでいたはずの主人公だけれども、女の子に恋したらあっさりと「死ぬのやめた!」になるあたり、実にこの監督らしいw

解雇、失業、自殺、殺人依頼…普通ならば十分にダークになる状況も、本監督のいつも通りのとぼけた演出で、何だか不思議なコメディーに仕上がっています。

今回は(自分が頼んじゃったのだから仕方ないのだけれど)殺し屋に追われる、というシチュエーションの為、若干スリリングな趣きがありながら、やはり期待通り主人公の間抜けさ加減が、不穏な空気をいい具合に相殺してくれます。

イギリスを舞台としたフランス男の孤独と悲喜劇という設定なのでしょうがないのですが、やはりカウリスマキ監督にはスウェーデンでそのローカルに生きる人々を撮ってもらいたかったな、というのが唯一の残念なところ。

しかし人を食ったような展開は健在。場所は違えど人間の愚かながら愛すべき点は変わらないよ、という事でしょうか。

相変わらず飛び抜けてかっこいい人も綺麗な人も登場しないカウリスマキ作品。しかしだからこそぐっと身近に感じられ、もう30年以上も昔の映画でもつい見てしまいたくなるんですよね。