「老人ホテル」

立て続けに原田ひ香繋がりで。今回もAudible。

「老人ホテル」 原田ひ香 著

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代々まともに働かず生活保護で暮らすという家庭で育った天使(エンジェル)。保護を受ける為だけに子供をつくり育児放棄している親から逃げるように家を出て、キャバクラで生活の糧を得る暮らし。ある日キャバクラのオーナーだった老女を偶然見かけるが、彼女は古びたビジネスホテルに長期滞在しているらしい。老女と接触し金儲けのノウハウを得て極貧生活から抜け出そうと、エンジェルはホテルの清掃係として働き始める。

前回読んだのは古本屋さんのお話でした。

minonoblog.hatenablog.com

訳ありの老人ばかりが1階フロアに長逗留しているビジネスホテル。そこへ「お金を稼ぎたい」一心でキャバクラオーナーに近づこうと清掃係になる主人公。彼女のほぼその日暮らしのような生活や他人の言動に対する(的を得ているような斜めに見ているような)解釈の描写が続き、遂にオーナーと接触できる場面までが結構長いです。

不動産投資で資産を得たオーナーの手腕を伝授してもらえるのか、結局極貧生活から彼女は抜け出す事ができるのか。

オーナーによる「指導」が始まってから物語が転がり出すように感じられましたが、ラストは意外。テンポの良さにある種「シンデレラストーリー」の類を予想していましたが、ちょっと裏切られた感があります。

いわゆる毒親に育てられた主人公。子供と絶縁状態のオーナー。この他母親との関係に長年苦しんでいた元ジャーナリストの老女も登場し、家庭の及ぼす影響というか呪縛みたいなものが、物語のベースにあるように思われます。

途中まで毒親との縁を断ち切ってなんとか幸せになるように主人公を応援する気持ちで読んでいましたが、最後に苦い気持ちに。うーん、境遇の辛さが彼女にここまでさせてしまうのか。

どうとでも解釈できそうなラスト。道を踏み外さず真っ当に生きて欲しいなと親のような思いで読み終えるのでした。