「最後は臼が笑う」思わずクスッとなる関西女のお話

サクッと読める短編。Audibleで。

「最後は臼が笑う」 森 絵都 著

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友人の桜子は39歳の公務員。生まれてこの方妻子持ちや借金持ちなどロクでもない男ばかりと付き合っており、騙されたり貢がされたりばかりの人生。しかし当の本人は「悪い男ほどどこかしら可愛いところがあるもの」と好んでそんな男ばかりに吸い寄せられていく。見兼ねた「私」を含む高校時代からの友人グループは桜子の男運を変えるべく決起するが、桜子自身一向に改心する気配もないまま自然消滅してしまうが、十年経った頃桜子からこの友人たちに召集がかかる。

全編「私」一人称によるベタな関西弁で語られる本作。落語の世話物を聞いているような錯覚に陥りそうなくらい、テンポよくそれでいてどことなく「まったり」した印象を受けました。Audibleによる耳読なので尚更ですね。

何かのトーク番組で「酷い男ほど、きっと私にだけ甘えてこんな顔を見せるのね、と女に思わせてしまう何かがある」そうで、たまに見せる僅かばかりの優しさに離れ難さを感じてしまうのだとか。あぁそんなものなんですかね。

本作の桜子も相当な「ダメンズ」好き。そんな彼女が「ひとかけらも可愛らしさが見当たらない正真正銘悪い男に出会ってしまった」と。そして彼の仕打ちが悔しくてたまらず仕返しして「ギャフン」と言わせたいので協力を友人たちに求める彼女。

今時「ギャフン」なんておばさんも使わないのに…と思いつつ、益々本作の落語的なノリに引き込まれていくのです。

スリルやサスペンスがあるわけでもなく、「そんなアホな」と思わせながらも、最後はスッキリさせて終わるあたり、大人の寓話のようでもあります。

ちなみにあまりに短いので短編集かと思い「Audibleアプリの不備かな」とも思いましたが、本作一編のみでした。私は家事をしながら聞いてしまったけど、電車の中で楽しむのがベストですね、やはり。