「コンパートメント No.6」

もう引越しの荷解きにウンザリし、「ちょっと体調悪いから」と映画館に現実逃避に。あー劇場も久しぶり!しかし7/1から続々と値上げする映画館。二本立て上映の目黒シネマも残念ながら1,500円から1,600円に。物価高の折仕方ないですね。という事で値上げ前に行って来ました。先ずはこちら。

「コンパートメントNo.6」

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1990年代モスクワ。フィンランド留学生ラウラは大学教授で恋人のイリーナと2人ムルマンスクに古代岩面彫刻であるペトログリフを見に行く計画を立てるが、イリーナのドタキャンにより1人向かうことに。寝台特急のコンパートメントで同室になったのは見るからに粗野な男リョーハ。酒を煽り無遠慮に話しかけてくるリョーハに嫌気がさし一旦は引返す事を考えたものの結局ムルマンスクまで共に過ごすことになる。

遥か昔ヨーロッパで寝台列車に乗った事を思い出しました。これよりはもうちょっと広かったと記憶しますが。大きな部屋で雑魚寝になった時は確かに男女入り乱れていたし熟睡なんか出来なかったなぁ。なので女子大生のラウラがいかにも下品そうなリョーハにウンザリし下車しようとするのはわかります。

でもこのリョーハ、無骨ながらなかなかいい奴です(イケメンじゃないけど)。ムルマンスクには鉱山に働きに行くと言う彼はいかにも労働者階級の男。大学で周囲にいる人々とは明らかに違い、最初はあからさまに嫌がっていたラウラですが、次第に彼の素朴な優しさに気づくようになります。

列車が一泊する夜に知人の女性宅に一緒に行こうと誘う場面も印象深い。結構しつこく誘うしよからぬ事考えてるんじゃ?と見ているも、本当に母親のような女性のお家へ連れていき、盛り上がる女性2人の邪魔をしないように自分はさっさと早く寝て、翌朝は早くから薪割りを(多分女性の為に)してあげている。いい奴なんです、強面だけど。

映画冒頭、恋人主催のホームパーティー。インテリの人達の中で馴染めない様子だったラウラ。ドタキャンも電話の応答も何となく恋人との隔たりや彼女の孤独を感じさせるものでしたが、素朴なリョーハの優しさに触れるうちに彼女自身が癒されていくように思われます。

とは言ってもラブストーリーじゃないんですね、本作。

劇中でもタイタニックが言及されていましたが、あのジャックとローズのようにはならなかった2人。ロマンスに発展しなかったけれど、それも又良かったような気が。美男美女ではなかったから、という訳ではありません。

ラストシーンも「あら、それで終わっちゃうの?」という感じ。でもその「あっさり感」も良かった。旅から帰ったら恋人と傷つかずに別れる事ができそうだな、などと勝手にラウラのその後を思わせてくれる余韻があって、私的には好きなエンディングでした。