先日モリコーネのお話をしましたが、
良くも悪くもモリコーネで成立する作品はあると思うんですね(と言うかそういうのが多い)。ジュゼッペ・トルナトーレ監督とはずっとコンビを組んでいるので、尚更イメージは定着している傾向に(そう言えばトルナトーレ監督は今後誰に音楽をお願いするんだろうと余計なお世話ですが)。
トルナトーレ&モリコーネと言えば「ニュー・シネマ・パラダイス」が有名ですが、もう一つ「あぁいかにも」な作品を久しぶりにアマプラで。
「マレーナ」(2001年)
映画.com
第二次世界大戦時、イタリアのシチリア島。12歳のレナートは村で一番の美女マレーナ(モニカ・ベルッチ)に恋をする。結婚したばかりで夫を徴兵された彼女は教師である父親の世話をしながらの一人暮らし。やがて夫の戦士の訃報と父親の死によって生活が困窮した彼女は生きていく為決意をする…
少年の成長を軸にしたストーリーは監督作品によく見られるもの。ここではその少年の目から見た女性の半生が描かれています。この映画、何と言ってもその女性を演じたイタリアの宝石モニカ・ベルッチがいてこその作品でしょう。シチリアの小さな漁村をひたすらに歩く、歩く、歩く…男達の羨望の眼差しは海風のようにねっとりとした湿度を感じます。
「美しい女は不幸になる」「女たちは美女に嫉妬しその不幸を望んでいる」という全くステレオタイプを見せつけられている気がしないでもないのですが、それを美しくカバーする働きをするのがモリコーネの音楽とシチリアの風景なんですね。
そして前述のモニカ・べルッチ。彼女の美しい肢体目当てで観る人も多いでしょうが、前半のモンローウォークさながらのクールさから一転、終盤体当たりの演技で運命に翻弄されるヒロインを見せてくれます。
ラストで、いろいろと嫌な事のあった土地であるはずなのに戻ってくるマレーナ。そんな彼女に対し島の女達は「シチリアの女だからね」と。
かつての輝きのない彼女を「島の同胞」として受け入れる女達と、そうと知りつつ島の女として生きていく事を選んだマレーナ。
女同士の、いや人間のドロッと嫌な面がサラッと流れていったのは、やはり音楽と映像の力であったように思います。
小さな田舎町の密な人間関係と乾いた風景、そして最後まで切ない余韻を持たせるモリコーネの音楽がとても印象的な映画でした。