「怒り」終わればあおいちゃんの熱演が記憶に残った映画でした

日本の女優さんの役作りの話をしたので、もう一本。

「怒り」

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東京で起こった残忍な殺人事件。現場に「怒り」という血文字を残し犯人は顔を整形して逃亡。その一年後千葉、東京、沖縄の3つの場所にそれぞれ経歴不明な謎の男が現れ、周囲は各々犯人の疑いをかけるようになる。
3つの場所と3人の男性が絡むストーリー。犯人は一体誰なのかという推理サスペンスになっていますが、ハラハラ感はあまりありません。

犯人がわかるも、「あぁ貴方だったの」程度のもの。(というか途中から明白)。

タイトルの「怒り」も誰の何に向けたものなのか釈然としないままエンディングに。

モヤモヤ感が晴れないので、原作も読んでみました。

「怒り」吉田修一 著

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それぞれの登場人物が深く掘り下げられ、人間関係に厚みが感じられるものの、尻切れトンボの印象は拭えず。怒りの正体そのものよりも、人間の誰しもが得体の知れない怒りを内包している事を炙り出さんとしているよう。そう考えても自分としては感情移入は難しい作品でした。本も映画も。

それでも映画は結構豪華キャストで、その中でも一番印象に残ったのは、宮崎あおい

彼女が演じたのは、軽度の知的障害を持つ女性。簡単に心も体も許してしまう彼女は、家出をし風俗で働いては父親に連れ戻される暮らしの中、素性のわからない男に惹かれてしまうという役どころ。

役作りの為一カ月で7キロ体重を増やしたあおいちゃん。

原作を読むと、ぽっちゃりとしたいかにも鈍重な印象を与える女性のようで、きっとそのイメージに近づけたかったんだろうとは思うけど、元々細いあおいちゃん、ぽっちゃりどころか平均よりまだスレンダーで、原作に近づくには多分20キロくらい増やさないとダメだったのでは?

しかしそんな事気にならないくらい良かったんです。

原作とは体型が違ってもフワフワと儚げなところが表れていて、結果として原作より印象深く、まさに渾身の演技でした。ラスト近くでは、「慟哭」というのはこういうのを言うんだ、と思ったくらい。

それをガッチリ受け止めた父親役の渡辺謙も、娘を思う男の情けなさや弱さが滲み出ていて良かった。

こういう俳優陣の熱演が観られたのでラッキーだったかな。