映画を観たいと思いつつタイミングが会わないままで取り急ぎ原作から読んでみる事に。Audibleで。
「エゴイスト」 高山 真 著
中学の頃母を亡くした浩輔。イジメに耐えつつ同性愛者である事を隠しながら生活していたが、やがて進学し上京。東京でしがらみのない自由な暮らしをしていたが、ある日ジムでパーソナルトレーナーの龍太と出会う。癌を患う母の面倒を見ながら暮らす彼と順調に関係を育んでいると思った矢先、突然龍太から別れを告げられ連絡を絶たれてしまう。諦めきれない浩輔は龍太を探すうちに、彼が生活の為に体を売っている事を知る。
羽生結弦クンについて書いた本で有名な著者。他にも雑誌Oggiに連載コラムを書かれていたそうなのでもしかしたら(美容院などで)読んでいたかもしれません。
本書はそんな著者の「自伝」とも言われている物語。
「大人になったら医者になってお母さんを助けたい」と思いながら願いが叶えられなかった浩輔は、病気の母と暮らす龍太に毎月生活費をサポートし、やがて龍太の母とも交流を持つようになる。
しかし自分の行為が最終的に龍太を追い込んで行ったのではないか、と考える浩輔。愛情ではなくただのエゴだったのではないのかと。
与え続ける行為を「見返りを求めない愛」と言う場合もあるけれど、往往にして自己満足である事が多いもの。
それでも与えざるを得なかった主人公にとって、それは亡き母に対して出来なかった事を懺悔する意味でもあり、又与え続けることが癒しにもなっていたのでは。
恋人との結末を考えると自虐的なタイトルは悲しくもありますが、ラストにある種救いがあると思われ、高山氏自身も自責の念だけで一生を終えていないと思えば、安堵する気持ちになります。
本書の最後には、映画版で浩輔を演じた鈴木亮平さんによるあとがきが。
映画化を知る事なく亡くなられた作者自身と思われる浩輔を演じるにあたり、高山氏を知る人々に彼についてインタビューされたそうで、曰く「浩輔は美化されている」とする人もあれば、「高山氏そのもの」と言う人もあったようです。
本書から高山氏自身に関心が移ったので、次は彼のエッセイを読んでみたいと思います。
ちなみにあとがきで、同性愛についての理解が深くなるよう日本の教育の改善を願うコメントがあり、真面目な鈴木亮平さんらしいな、と思いました。作者の高山氏自身はそういう事考えて本書を書いたんでしょうかね。わからんけど。