「CURE」怖いのは憎悪を目覚めさせる催眠か、憎悪を隠し持って生きる人々か

アマプラKadokawaコレクション祭りw

サイコホラーは(眠れなくなるので)苦手なんだけど観てしまいました。

「CURE」(1997年)

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猟奇的な連続殺人事件が発生。いずれも胸が十字型に切り裂かれる事を不審に思う刑事高部(役所広司)は友人で心理学者の佐久間(うじきつよし)の協力を得ながら捜査を進める。同じ頃、記憶障害を持つ男間宮(萩原聖人)は行きずりに知り合った小学校教師、警官、女医のそれぞれに不思議な話術を施し、その後彼らは一様に殺人事件を起こしいずれも連続事件と同様の十字型の傷を付けていた。催眠暗示の可能性を思い立った高部は一連の事件の容疑者として間宮の調査を開始。精神病の妻(中川安奈)の介護で精神的ストレスを抱えていた高部は、脈絡の無い話をする間宮に苛立ちを覚えつつ次第に翻弄されるようになる。

実は以前YouTubeで流れてきていたのでラストシーンだけ知っていましたが、あらすじも知らなかったので何が怖いのかわかりませんでした。

恥ずかしながら本作一度見ただけではあまり良くわかっていなかったと思います。ネットに出ているいろいろな方の考察を読んで、あぁそうだったのか…と思い至ったくらいなので。

序盤早々に犯人は間宮とわかってしまうものの、その人を引き込む話術で対話した誰もが自分も気づいていない(もしくは気づかぬように蓋をしている)深層心理が引き出されていく。

例えば妻を殺害した小学校教師。高校時代からの付き合いで仲睦まじく暮らし周囲の評判も上々。しかし間宮との会話で妻のことを聞かれた時「何にもしていないただの主婦だ」と暗い表情で答える場面があるんですね。そして間宮にもっと奥さんの事を聞かせてと言われる。それ以上の会話は映らないのですが何かしら日頃の不平や不満を語っていた事を想像させるシーンです。

間宮を追い詰める立場である高部も、病気の妻を負担に思っている内面を隠して生活している事を間宮に見透かされしまい思わず感情を爆発させる場面があるのですが、やがて高部自身が催眠療法の世界に取り込まれていくのです。

内面にある憎悪や苦しみを吐き出させ(たとえそれが殺害に至ったとしても)それによって解放することが「癒し」であり、その「伝道師」となった高部。

高部がファミレスで食事するシーンは2回出てくるのですが、1回目は殆ど手もつけていなかったけれど、ラストでは綺麗に完食していた事からも、彼が隠していた苦悩から解放された事は明らかで、それも合わせて観るとやはりあのラストシーンはジワリとくる怖さがあります。

日本映画特有の湿った感じがあまりしない、ドライなホラーという印象。「シネマコレクション by Kadokawa」は2週間の無料体験中なので、他の黒沢清監督の作品も観てみようと思います。