「映画を早送りで観る人たち」効率重視で得た情報で望む個性は手に入れられるか

岡田斗司夫氏が以前おすすめしていた本を配信を待ってAudibleで。

「映画を早送りで観る人たち」稲田 豊史 著

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スマホipadで気軽に映画を楽しめる若者たち。早送りや10秒飛ばしを駆使し本数消化をこなす。時にネタバレで予め内容を把握した上で「ざっと流し見」する事も。彼らにとってこれは映画鑑賞ではなく「コンテンツの消費」。何故このような傾向が見られるようになったのか、著者は自身が青山学院大の学生を対象にアンケートを取り、そこから行動の背景を探り解説したのが本書です。

著者によると、今の若者はとにかく「時間がない」。大量の情報を消化しその中から自己に適したものをピックアップして身につけ「際立つ個性」としなくては、多くの学生の中で埋没してしまうから。それは単に友人の間で「適度にキャラの立つ人間」として居心地の良いポジションを確保するだけでなく、最終的にはエントリーシートに書き込めるくらいの「売り」になる個性を身につけないと、就職に不利になってしまうから、というのが著者の見解です。

最近流行りの「タイパ」。長いデフレのこのご時世、コスパを気にするよりもいかに時間効率よく情報収拾できるかが肝になるのでしょう。

かつてオタクと呼ばれた人達と同じようには、目的物や周辺情報を思う存分漁るだけのお金も時間も無い若者達にとって、(際立った個性を持つという意味で)オタクは憧れの存在であるけれど成り切る事ができないので、せめて効率よく消費するしかないのでしょう。

我が家の20代の若者2人を見てみると、本書で指摘されているような「LINEグループで悪目立ちせず且つ埋もれてしまわないように自身のキャラを確立させるのに努力している」様子は見られません。

ただ確かに就活では、ネットで手軽に情報を得られる一方で横並びにならないように自己アピールするのは、アナログだった我々世代より難しいかもしれませんね。

さて、タイトルの「早送り」について、岡田斗司夫氏は当初理解はするものの違和感があるらしきコメントだったのですが、後に一度やったら慣れてしまった、とあっさり早送り派に転向したのを認めました。実際スマホで映像を観る人達は、若者に限らず流し見しているケースが多いのでは?

思えば昔も飛ばし読みやラストの先読みなどあったし、ビデオの早送りをする人もいたと思いますが、その頃と比べ物にならない程圧倒的に情報量が多い現代。しかもそれは今後も加速化されるであろう事を考えると、未来を担う若い世代がエンタメの世界にも効率を求めるのは仕方ないかもしれません。