「哀れなるものたち」異次元のような美しい映像とグロテスクさが混在

アカデミー賞多部門でノミネートされている作品。初のシニア料金利用で観に行きました。ん…いろいろと凄かったです。

「哀れなるものたち」

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映画.com

天才外科医ゴッドウィン(ウィレム・デフォー)は、若く美しい妊婦(エマ・ストーン)の水死体をその胎児の脳を移植し蘇生させ「ベラ」と名付け、実験成果としてその成長を管理・記録している。成熟した肉体に幼児の精神を持つベラは外出を禁じられていたが、その美貌に魅入られた弁護士ダンカン(マーク・ラファロ)と共に逃避行し、大陸を横断しながら未知の世界へと冒険の旅に出る。

スコットランドの同名ゴシック小説の映画化。明示されていないけれどおそらく19世紀後半頃を時代背景に、ロンドン、リスボン、パリ、そして豪華客船と様々な場所を舞台としながら、幼児の知能しか持たないベラは急速に成長を遂げていきます。それは知的にも性的にも。

死体の復活という事でフランケンシュタインが連想されますが、胎児の脳で蘇生させるという設定が奇抜。死体から内臓を取り出すシーンなどグロテスクな場面が続くと思えば、性に目覚めたベラの奔放な行動はこれでもかと性的なシーンが出てきます。正直ここまでする必要あるのか、と思えるくらい。

エマ・ストーンは文字通り体当たりの熱演ですが、映画全般にわたる「エロさ・グロさ」にとどまらず一つの作品となり得ている(と思われる)のは、映像や音楽の効果と相まって彼女の二次元的というか無機質な風貌に寄るところも大きいと思います。やたらと多いベッドシーンばかりが目を引いてしまいますが、幼女から成人まで一気に成長する様をその二次元的な容姿で見せた彼女はやはり凄いです。

一見めでたしめでたしで終わったように見えるラスト。しかし最後に「Poor Things」と大きくタイトルか映し出されるエンディング。哀れなものとは一体何なのか?

文学や哲学を始め知識や教養を詰め込み、性の解放を謳い、ついに医者を志すまでに成長を遂げるベラ。彼女はしかし一方でゴッドウィンの異常な倫理観に洗脳されており、(幾ら悪党相手とは言え)人間に対し施すものとは思えぬ施術をします(まぁここまでも相当良識は逸脱しているからもはや驚きませんでしたが)。

そんな彼女を讃えるように側にかしづく元フィアンセ、ベラ2号のような人体実験をされている女性、その女性を顎で使うようになった召使、動物のように地面を這いつくばる男…

人として女性として進化した存在と自らを認識している(ように見える)ベラを含め、登場人物全て「哀れなるもの」と暗示しているエンディングと捉えるなら、散々見せられたエログロもこのラストに至る為に不可欠と言えるのかな、と感じました。まぁでも二度はキツイかな…