「拾われた男」"偉人でも故人でもないけれど"ドラマ化された男のエッセイ

ドラマを「チラ見」した後にAudibleで。

「拾われた男」 松尾 諭 著 

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「何となく」俳優になりたくなって上京。たまたま自動販売機の下で拾った航空券の持ち主がモデル事務所の社長であったことから、同事務所の所属+所属女優の付き人(運転手)に。女の人に惚れっぽくてお酒が好きで借金まみれで…そんな俳優志望の男の自伝「風」エッセイ。

このドラマ化を観るまで正直「松尾諭」と「六角精児」の区別がついていませんでした。よく見ると違うんですけどね(でもネット上では似てるという意見もヒットされるので私だけではないんだと安堵…)。

オーディションを受けても落とされる日々。やけになっているのか落ち込んでいるのか、酒を飲んでは酔っ払い折角雇ってくれているバイト先も遅刻や無断欠勤を重ねいつの間にか辞めてしまう。

(恐らく本当の著者は人知れず努力されているとは思いますが)少なくとも本書を読む限りは「のらくらしているダメな男」としか映りません。

それでも何故か周囲の人が手を差し伸べてくるんですね。モデル事務所の社長や付き人をしていた女優(本書では明かされていませんが井川遥らしい)もバイト先の社長も、度重なる失敗(確信犯的な遅刻を含む)なども許してしまうのです。

これはご本人の人柄なのでしょう。「惚れっぽい」というのはそれだけ情が厚いという事。本書でもよく堪えきれずに泣いてしまう場面が出てきます。

別のインタビュー記事を読むと、「よく人の心に土足でヅカヅカ入ってくると言われる」とコメントされていて、多分人懐っこい方なんでしょうね。撮影現場でも積極的に共演者に声をかけにいくそう。そんな彼だからこそ、縁や運に恵まれているのでしょう。

各章の頭に過去のエピソードがあるせいで時系列が前後する錯覚に落ちることがあったのですが(Audibleなので尚更)、ご本人曰く「落語の枕を意識して書いてみた」との事だったのでこれは納得。

波乱万丈というよりは何だかほのぼのとしたエッセイでした。

文庫本には友人の高橋一生による寄稿文が巻末に乗っているとの事。早速本屋さんで探してみます。