「ぼくは君たちを憎まないことにした」

12月1日は映画の日。お安く観させていただく日なのでありがたく活用させてもらいました。ところで来月とうとう還暦を迎える私。晴れてシニア料金で見られます。わーい!

「ぼくは君たちを憎まないことにした」

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2015年11月13日パリ。ジャーナリストのアントワーヌは仕事でクラブへ行く妻エレーヌを送り出すが、その夜同時多発テロがパリで発生し不運にもエレーヌはその犠牲となってしまう。まだ幼い息子メルヴィルを抱え妻を失った悲しみや育児への不安を断ち切るかのようにSNSでテロリストへのメッセージを綴ったところ、多くの共感を得て拡散されやがてメディアにも露出されるようになる。

2015年にパリで実際に起きたテロ事件で妻を失ったジャーナリストの実話を基にした作品。

突然の悲劇にどう向き合って良いかわからぬまま「テロリストへ向けた手紙」という形で、「息子と二人今まで通りの生活を続ける」ことで逆にテロリストに立ち向かい決して「憎しみを贈らない」旨の宣言をした主人公。

感動的なメッセージは瞬く間にシェアされ、美談に仕立てようと取り上げるメディアにも彼は露出を拒みません。

しかし自身のメッセージにあるように自らの気持ちが吹っ切れたわけではなく、寧ろ時間が経つごとに心が揺らいでいるように見えます。

妻を亡くして幼い息子を育てる彼には同情の目が寄せられる一方、事故から程なくしてTVのインタビューに応じる彼を「英雄気取りだ」と揶揄する親族も。

正直メディアに出た彼の気持ちは推し量れません。でもあまりの出来事に自分でも混乱していた事、そしてその混乱や不安を払拭する為に公の場を利用していたとも考えられるのです。

何かとケアしてくれる友人達に八つ当たりしたり、妻の葬儀の段取りを親族に押し付けたり、保育所のママたちが当番制にしてまで作ってくれたスープをトイレに捨てたり…決して褒められる父親ではなくだらしない点も多々ある男性として描いているのが、むしろ物語を美化していなくて良かったと思えました。

深い悲しみというのはボディブローのようにじわじわと効いてきて、いつまでも向き合わざるを得ないものなのでしょう。

でも自分が撮った動画に写る息子の笑顔に涙する彼の表情には、それでも前に向かって生きていこうとする決意のようなものが感じられました。

多くのレビューにあるように、子役の子どもが本当に可愛い!こちらが自然と泣けて来るような笑顔や涙を見せるんです。設定では1歳の息子ですが、実際に演じているのは3歳の女の子。もう天才ですよ。この子の愛くるしい表情を見るだけでも価値ある一本です。

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