「JK、インドで常識をぶっ壊される」今どき女子高生の素直でまっすぐな視点に惹かれる滞在記

タイトルと表紙のイラストでサクッと読める内容かな、と思い選んでみましたが、思いの外良かったです。Audibleで。

「JK、インドで常識ぶっ壊される」 熊谷はるか 著

ごく普通の女子中学生である主人公。来年からは花のJKになれる!と喜びもつかの間、父親の転勤で急遽インドに3年間滞在することに。初めての海外、しかも「カレー」しか思いつかない国に行くなんて。

大きな不安を胸に家族と共に渡航する主人公。そこでは日本で当たり前と思われていた諸々が根底からひっくり返るくらいに、文化や慣習の違いと遭遇する事になる。そして貧困による格差社会などに、ハイスクールの仲間と共に真っ直ぐに向き合いながら3年間を過ごすようになる。

奇をてらった内容を連想させる表紙の軽さとは反対に、スタンダードな高校生の生活日記のようです。

招待された時間にオンタイムで行くのは非常識(およそ2時間遅れて行くのが当たり前)、ほぼ交通規制のないような傍若無人な車の合間をくぐり抜けるスリル、犬猫だけでなく牛や猿までごく普通に共存する街中。

恐らくそんなお国でしょうと予想される状況に、これも想像通り都度面食らっていく女子高生。

食生活や文化の違いを紹介する「ガイドブック」的な面白さで始まる本書も、インド国内の貧困層に目を向けやがてボランティア活動に従事するようになるあたりから、女子高生の視野がグッと広くなるのがわかります。

運転手やメイドに囲まれる分不相応と思われる生活に、最初は困惑し違和感と罪悪感を持っていた彼女。しかしそうやって使用人を雇うことで彼らの生活を助ける事もでき、何より彼らのおかげで大きな苦労なく生活が出来る事に、素直に感謝の気持ちを持たねばと考えるように。

あぁこの子はとても大事に育てられたのだなと思わせる場面の一つです。

ボランティアの一環で施設やスラムを訪れる際にも、「何かをしてあげる」という奢りが自分にはないか、逆に傷つける事になるのでは、と当初戸惑いを持つ彼女に、それだけ真摯な思いや姿勢が感じ取れるのです。

活動を通じ現地の子供達の明るい笑顔に触れ、逆に楽しい経験をすることができた、と素直に喜びつつ、笑顔で毎日を遅れない子供達が沢山いる事にも思いを馳せる彼女。

こんな若者がいる事にとても嬉しくなると同時にいろいろ教えてもらった気がします。

本書は「学生による、学生のための出版コンペ」である出版甲子園の第16回グランプリ受賞作でもあります。学生たちのパワー、なかなか侮れませんね。