「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」グローバルなカンニング作戦でスパイ映画みたいなスリルを味わう

サブスク解約前に慌てて見ています。その中の一本。ネトフリで。

「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」(2018年公開)

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映画.com

成績優秀の為特待生として有名校に転入を果たした女子高生リン。周りは金の力で入学して来た学生らしく、裕福だが成績の悪い連中ばかり。友人になったグレースに、テスト中巧く答えを教えてやった事を発端に、回答を教える代わりに報酬を得るという取引を開始。顧客も段々増える中、遂に世界各国で実施される大学統一入試「STIC」で大掛かりな「カンニング」を計画。緻密な作戦は果たして成功するのか?

本作はタイ映画ですが、実際に中国で起こった事件をモチーフに作られた映画だそうです。

監督は「プアン 友だちと呼ばせて」のナタウット・プーンピリヤ。「プアン 」の時は大人の世界をお洒落な映像と音楽でみせていましたが、今度は高校生の「カンニング」事件をスリリングに仕上げています。

映像がスピーディー。とりわけテストの試験官から追われ地下鉄構内を逃げ惑うシーンはハラハラさせ手に汗握る場面です。アップやスローモーションを駆使して、追い詰められる主人公の心理が伝わるような絵になっています。

え、こんなやり方でカンニングってできるの?と思うようなアクロバティックな手法を使って作戦をこなしていく彼ら。主犯格のリン、頭脳明晰です。その知恵と度胸があれば普通に社会で大物になれるでしょうに。。

本作、学生のカンニング事件が題材ですが、金で成績も留学も手に入れようとする富裕層と、そんな彼らから「頭脳」で金を得ようとするリンたちとの貧富の差も浮き彫りにしており、コメディタッチの中に社会派の要素を絡めています。

カンニングに協力する事で大金を巻き上げる彼女は、どうしようもない社会の構造に復讐しているかのようにも思えます。

とんでもない事をしでかした娘に対しどこまでも優しい父親が印象的。だからこそ主人公が「正しい」道に進もうと決心する結末にも納得できます。

富裕層グループの学生たちもお金持ちのお坊ちゃんお嬢さんらしく、のほほんとして基本的に人の良い子供たち。

でもその「悪気の無さ」が故に無意識に弱者を傷つけている事にも、静かに警告を放っているようでした。