「マッチ工場の少女」シュールでブラックユーモアなカウリスマキ作品

観たかった「枯葉」を見逃してしまい、その代わりと言ったら何ですが同監督の作品をアマプラで。

「マッチ工場の少女」

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映画.com

フィンランド。マッチ工場で働くイリス(カティ・オウティネン)は母と義父の3人暮らしで生計はイリスの稼ぎのみ。貧しく質素な衣装しかないイリスにはダンスホールに行っても声をかける男性はいない。ある日店先にあるドレスを目にしたイリスは、衝動的にもらったばかりの給料でドレスを購入するが、家に帰ると怒った義父に殴られ母親には返品してこいと言われる。腹立ち紛れにドレスを着たままディスコへ向かい声をかけてきた男と一夜を共に過ごし、後に妊娠している事がわかるが、男はただの遊びだったことを知る。

初のアキ・カウリスマキ監督作品。薄暗い石畳の街、どんよりした空、極力削ぎ落としたように少ない台詞とそれを補うような曲の数々(ポップスからクラシックまで)。一種独特の空気の中淡々と物語が進みます。

余計な説明はなくエッセンスだけが抜き出されているような展開。それでも自分の僅かな収入さえ自由にできない主人公が、日々の生活に抱える閉塞感は十分伝わってきます。

主演の女性(もう「少女」とは呼びづらい容貌なのだけれど)は本監督作品の常連女優だそう。決して美形とは言い難いのですが、不幸を絵に描いたような主人公の、鬱積した感情を言葉少なにその表情で物語っています。

無言の場面が多くとぼけた雰囲気を醸し出しているシーンもしばしば。ブラックコメディーのような結末で何とも不思議な「間」を感じる作品です。

本作は「労働者三部作」と称されるシリーズの一つだとか。「XX三部作」がいくつもあるカウリスマキですが、この独特の世界、他の作品でも是非観たくなりました。