この人の名前を聞いただけでスッとスクリーンが蘇ってくる、映画音楽の巨匠。「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレが監督したエンニオ・モリコーネのドキュメンタリー。
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医者を目指していたのに、父親の勧めで同じトランペット奏者になったモリコーネ。その後作曲家となり、500本以上の映画やテレビの音楽を手がけ精力的に活動し続け、2020年91歳で死去する前年までツアーで指揮をとっていた音楽家。
本作は、「荒野の用心棒」など多くの代表作の名場面と共に、ワールドコンサートツアーの演奏シーンや、オリバー・ストーンなど著名な監督や音楽家のインタビューを交え、モリコーネの人となりとその作曲に向ける姿勢に迫ったものとなっています。
選び抜かれたとは言え50本以上の作品の主題曲となると、観ていなかった映画もあったものの、数々のエピソードも興味深く、内容の濃い2時間半のドキュメンタリーでした。
小学校の同級生で何度もタグを組んだセルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」、当時まだ新人だったトルナトーレ監督の「ニュー・シネマ・パラダイス」、デ・パルマ監督の「アンタッチャブル」など、当然アカデミー賞を受賞しているものと思っていたけれど、実際は無冠に終わっていたモリコーネ。何度もノミネートに終わり、名誉賞を経て、ようやくオスカーを受賞したのはタランティーノ監督の西部劇「ヘイトフル・エイト」
映画オタクのタランティーノにとってはアイドルのモリコーネ。是非とも実現したかったコンビではあったでしょうが、モリコーネが提供したのは彼独特のユニークな楽曲ではなく交響曲。レオーネ大ファンでもあるタランティーノにしてみれば予想外だったはず。それでも授賞式壇上でモリコーネ以上に喜びを爆発させているタランティーノ、微笑ましい限りです。
一方モリコーネはこの交響曲提供にあたり、「ウエスタンに復讐する気分」「過去との決別」と言っているように、自身でも新境地を切り開いた形となり、巨匠と言われる立場にあっても常に挑んでいく姿勢には驚かされます。
後半多くの人々の「モリコーネ賞賛」が延々続き、少々Too muchな印象も。しかしファンが集まって推しを愛でていると思えばわからなくもないでしょうね。
残念なのは私自身に音楽の知識が一欠片もない事。映画から得るインスピレーションやそれを作曲時にいかに織り込むかを、身振り手振りで熱く語るモリコーネの話が、技術的にもう少し理解できればもっと本作は面白かっただろうにと悔やまれます。
せめて偉大な作曲家の作品を、映画の一部としてこれからも楽しんでいければと思います。