「シュヴァリエ」革命の時代を生きた作曲家

機内で観た最後の作品。全く予備知識なく鑑賞しましたがなかなか見応えありました。

シュヴァリエ

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映画.com

 

18世紀フランスのパリ。ジョゼフ・ブローニュ・シュバリエ・ド・サン=ジョルジュ(ケルビン・ハリソン・Jr)は、フランス人農園主と黒人奴隷の間に私生児として生まれたが、幼い頃に類まれな音楽の才能を認められ貴族としての教育を受け、やがてバイオリニスト、作曲家、剣士としての能力を発揮、その多才ぶりで一世を風靡し、マリー・アントワネットの寵愛を受け、社交界で頭角を表していく。華々しい日々を送る中、侯爵夫人と恋に落ち関係を深める一方で、アントワネット王妃の不興を買った事で、次第に宮廷での地位を失っていく。

実在したバイオリン奏者で作曲家であるジョゼフ・ブローニュ・シュバリエ・ド・サン=ジョルジュの人生を基に描かれた作品。

出だしからバイオリンの見事な腕前を披露しその才能を見せつける主人公。しかし奴隷が当然のように制度化されていた当時のフランスで、いかに父親が農園主で財力があったとは言え、幼少時からその外見故に相当な差別や虐めにあっていた事は想像に難くないでしょう。

周囲の冷たい目をはねつけるように自らの才能と恐らくそれを上回るほどの努力でのし上がってきた事も容易にわかります。が、地位や女性たちなどあらゆるものを手に入れ、傲慢に振る舞いながらも更に高みを望むジョセフ。

当初は擁護者であった筈の王妃に手のひらを返され、逢瀬を重ねていた人妻にも去られ、自暴自棄になる姿に「これは破滅型天才の話になるかな」と思わされましたが、生き別れだった母親との再会が大きく影響することに。

自分の才能を武器にのし上がり自分は「勝ち組」と信じていたものの、結局は内心肌の色で見下げられていた現実を知る彼。でも貴族社会が否定するそれこそが自分のアイデンティティである事を母を通じて思い知らされるのです。

時はまさに革命前夜。人種や階級に関わらない真の自由を訴える運動が次第に熱を帯びジョセフもそこに身を投じていきます。

白人のフリではなくあくまで黒人としてのプライドからドレッドヘアで指揮棒を取るコンサートシーンは群衆も一体となり迫力の場面でした。

本作日本では未だ劇場公開されていないように思うけどどうなんでしょう?出来れば大きなスクリーンで観てみたいなと思います。