タイトルからもわかるようにマーケティングの本ですね。かなり昔「ステーキを売るなシズルを売れ」という本がありましたっけ。いつも思うけどタイトルって大事だわ。
「パン屋ではおにぎりを売れ」 柿内尚文 著
柿内尚文氏は以前読んだ「バナナの魅力…」の著者。
雑誌や書籍の編集に関わり、これまで企画した本は累計発行1000万部以上、10万部を超えるベストセラーは50冊以上という柿内氏の初の著書。
「バナナの魅力を100文字で伝えてください」では、コミュニケーションスキルについて述べていた著者。今回はアイデアを生み出すための思考法について語っています。
ベストセラー本の編集者である柿内氏。いかに新しい発想に至るかが肝と思われますが、アイデアを得る事よりも「考え方」が大事であると説明されています。
そもそもただ何となく「思っている」だけの事を「考えている」と誤解している人が多い、と著者は指摘しています。例えばネットで何かないかと検索しているだけでは、単なる「思いつき」を求めているにしかならず、「考え」には至っていないという事のようです。
著者によれば、「考える」のは「広げる」と「深める」の2つの方向性があり、それぞれ別々に行うのが効果的だそうで、本書では各々6つの方法が提示されています。
それぞれに面白いのですが、例えば「かけあわせ法」であれば、課題とされるものに出会った事のない新しいキーワードを掛け合わせていく方法(例:うんこ漢字ドリル)や、「ずらす法」ならばターゲットをずらして新しい価値を生み出すやり方(例:作業服からアウトドアウェア販売に展開成功させたワークマン)など、具体的な例もあり、なるほどと思わせます。
ロジカルな思考を積み重ねるパターンとは別に、論理的な思考に「敢えて」非論理的な考えを掛け合わせる事で、想像以上のアイデアにたどり着く面白さが示されています。
インタビュー記事で、アイデアを生み出すネタとして読書や映画鑑賞などしているか、と聞かれ、特にしていないと答えた著者。むしろ日々目にするものを観察し、持ち歩いているノートにメモする事から得られるモノが多いそう。
本やネットから多くインプットしているつもりでも、そこから考えを巡らせ何らかアウトプットしなければ、思考は発展しないという事ですね。マーケティングだけでなく、日々の生活での発想の転換にも使えるのではと思われる内容でした。
ところで本書のタイトルですが、例えばバーガー店でライスバーガーを出して売れているのだから、パン屋で「本気の」おにぎりを販売してみては、というまさにターゲットを「ずらす」発想の転換からきているもの。本書はヒットしたけれど、まだおにぎりを置いているパン屋さんは見ていません。そのうち出てくるのかな。