「NOPE」スクリーンで最悪の奇跡を観る

「ゲットアウト」「アス」を見たサイコスリラー好きの娘と一緒に。

「NOPE」ノープ

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引用:映画.com

私自身は気になりつつも「ゲットアウト」も「アス」も見ないままだったけれど、予告編に惹かれ、且つ両方見て「きっと同じ監督だし面白いよ」と言う娘と観に行きました。

田舎町で牧場を経営する一家。父親の不可解な死とそこで巨大な「何か」を目撃した事から次々と奇妙な現象が見られる遂には多くの人が犠牲に…

…と言ってもこの「何か」は最初からUFOの類だろうとあっさりと明らかになっており、主役の兄妹も逃げ惑うと言うよりも撮影して一攫千金を狙うくらい。つまりそこにホラーの要素はあまりありません(その割にはハラハラ感は十分ありますが)。

広大な牧場を覆う灰色の雲、突然暴れ出す馬、急にダウンする携帯電話、フェイドアウトしていく照明…不気味感はあっても得体の知れない怖さと言うのではないのですね。正体は分かっているから。

ちなみにこの「何か」、正確には未確認「飛行物体」ではなく未確認「生体」。生き物です。エイリアンですね。

大きな円盤のような物が雲間から現れる、空を見上げる人々、中から宇宙人が出てくる、地球人との交流が始まる…などという「未知との遭遇」的な展開はありません。

ただただ生物を喰い消化できないものは吐き出す(お行儀悪いです)。これって何が言いたいのだろうか…

本作はこのエイリアンも含め、人間と関わる他生物も重要なファクターになっています。牧場で飼われる馬たち以外に、かつて人気TV番組収録中に突然暴れ出し出演者を死傷させてしまったサルもまさにそれ。

ここで一つの構図が考えられます。それは手懐けて(調教)コントロールしようとする(管理)人間の他生物へのアプローチです。

TV番組の中で人間の書いたシナリオ通りの服や行動を取らされ、遂にはキレて暴走したサル。一方エイリアンも、テーマパークの興行主に馬を生贄におびき寄せられ見世物にされそうになり、結局観客もろとも飲み込んでしまうのです。画像4

引用:映画.com

動物を飼い慣らし服従させていると思っていると、人間がしっぺ返しを被るという構図を、エイリアンを使って表していると考えられなくもないでしょう。

画面の不気味さから、暴走した馬まで襲ってくるんじゃないか、と思っていたのですがそうはならなかった。多分主役の兄妹が馬を家族のように扱っていたからではないでしょうか。

タイトルのNopeの意味は、「えー」「ありえない!」「まさか!」といったところ。通常のサイコホラーをイメージして、或いは前2作から連想しての怖さを予想して行くと、期待外れというか肩透かしを食らった気になるかもしれません(はい、私です)。

でも冒頭の旧約聖書の引用から、二重にも三重にも伏線が張られていることを考えれば、考察もしないで本作の面白さがわかるなんて「Nope(あり得ない)」と言われているような気がしてきました。

と、言うことで再度観に行こうかな。いやその前にゲット・アウト見よう…

尚、昨日サービスデーだったのにあまり人いなくて静かでした。本作、IMAXカメラでの撮影も含め製作費は本監督作最大だそうです。スケール感楽しむためにも、是非映画館で。