ドキュメンタリーの要素を施した映画にリアルな子供の声は反映されているか?

モノクロ画面のノスタルジックさとホアキン・フェニックスの珍しく「いい人」感漂う予告編に惹かれて。平日の名画座で。

「カモンカモン」

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引用:映画.com

主人公(ホアキン)はNYに住む独身のラジオジャーナリスト。各地の子供(ティーンエイジャー)を相手にインタビューしその内容を編集して番組を構成している。その彼が長らく疎遠にしている妹から甥っこを預かる事になる。ほんの数日の予定が諸事情が重なり何日も共に生活していくうちに、口論やすれ違いも交えつつ交流を深めていく、というヒューマンドラマ。

こう書くと、子供に振り回される独身男の定番ドタバタコメディーが予想されますが、本作では(迷子になりかけるというハプニングは多少あるものの)主人公と子供、そして妹(子供の母親)との会話でほぼ進められて、目立ったアクシデントもありません。

もう一つ映画の骨子になっているのは、米国各地に出向き現地の子供達を訪ねるインタビューの様子。これはホアキンが台本なしに子供達を取材したドキュメンタリーだそう。

偉そうに言ってくる大人たちに不満をいう普通の女子もいれば、お父さんが刑務所に入ってどうしようもない生活を送っている少年もいる。

実際の子供達の声を拾いつつストーリーを膨らませる。これは感動するパターンかなと思いながら何と寝てしまいました、不覚にも…

それも一度とならず二度までも。何故だ!ホアキンなのに。子役の演技も完璧なのに…

本作、終始モノクロでまるでドキュメンンタリー調の画像(インタビューはドキュメンタリーですが)。絵面は美しいのですが何でモノクロなんだろう、と。

主人公(結婚せず家族を作らない独り身の男性)の「都会で仕事に終われる人間としての』陰鬱とした心情を描くならモノクロですね。でも対する甥っ子は好奇心いっぱいの(多少多動症的なところがあるものの)純真な少年で、初めて訪れるNYなどきっとカラフルかもしくはえげつない色彩のイメージだったのでは?そんな事を考えているともっともっとメリハリがあってもいいストーリーだったのでは、と思われます。

コンビニでわざと隠れておじさん(主人公)を驚かそうとする少年。セキュリティーの観点から必死に探し甥のいたずらとわかった時点で厳しく叱る主人公。これに対しても冷静であるべきという妹のアドバイスがあるんですね。そして結局甥っこに謝ってお互い仲直りするという…

どうなんだろう…一通り子育てを経験した身にしてみれば、ふざけ過ぎて度を越した子供に対しては厳しく諭して良いのでは、と思われますが。

いや、何だろう、この「お仕着せ」の感じがするのは?子供って大人をこんな風に見てるでしょ?きっとこんな風にして欲しいんだろうな?というのがあちらこちらから漂ってくるような気がしてくるのです。

そう思うとドキュメンタリーであった筈のインタビューでさえ、「ひょっとしたらこの子らもこういう風に答えるほうが大人は喜ぶよね」と思いながら言っているかのように思えてくる…

そんな訳で感動の一作にはならなかったのですが、高レビューの人も多そうなので一見の価値はあるか、と。そうそう、画角や音楽はセンスの良さが感じられました。