「板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh」棟方志功とその妻の半生を東北弁を交えた朗読で

今年最後のAudibleになるかな?と思いつつ。おせち作る手が止まりそうになりながら聞いていました。

「板上に咲く MUNAKATA: Beyond Van Gogh」原田マハ 著

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幼い頃から絵が得意な少年だった棟方志功。初めて目にしたゴッホの絵に感銘し、画家になることを目指して青森から上京するが、指導してくれる師もなく画材を買う金もなく、更に幼少からの弱視という画家にとっての致命傷を抱えた棟方は、帝展に出品するも落選続きの日々。やがて木版画こそが自分の能力を活かせる道だと考え、油絵から版画に転向。貧しい生活の中ひたすら日本のゴッホになるべく邁進する。

40年余り棟方を支え続けてきた妻チヤの目線で語られる棟方の半生。

朴訥として一風変わっているが絵に対する情熱の塊のような棟方と出会い、一生を共にすることになる同郷のチヤですが、本来は「ただお嫁に行くだけよりも手に職をつけて社会に出たい」と考えていたような1920年代当時にしては珍しく意識の高い女性であっただけに、一度決めたら変えない頑固さを秘めており、その強さ故に最後まで棟方を支え続ける事が出来たのであろうと思われます。

様々な困難を乗り越えて日本美術だけでなく、世界の版画にも革命を起こしたと言われる棟方の生き様が知られる作品です。

筋立ても良いのですが、女優渡辺えりの朗読が素晴らしい。特に随所に出てくる東北弁も味わい深いです。インタビューによると彼女自身は山形出身で青森弁はイントネーションが違うので難しかったそう。演劇界で苦労してきた自身の半生とも重なるのだそうで、ナレーションに思い入れが感じられます。

Audible先行で発表された本作。方言も含め朗読で活きる作品だったような気がします。