国境を意識しない「地球人」的な生き方が見える本

ちょっと気楽に読める本がいいな…と選んだ本作。Audibleで。

「国境のない生き方 私を作った本と旅」 ヤマザキマリ 著

国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書)

何だか帯がすごいですね。「地球サイズで見れば悩みなんてハナクソ。」(すごい言い方笑)

著者はあの「テルマエ・ロマエ」の原作者。漫画は未読だけど映画は面白かったなぁ。そんな著者の半生と自身に影響を及ぼした本の数々を紹介した本作。

何かのコメントかエッセイで世界を転々としていると言われていた記憶があったけれど、もう人生の殆どが「旅」のような方。

14歳で初めてのヨーロッパ一人旅、17歳で画家を目指し単身イタリア留学、貧乏な苦学生を経験しながら現地の学生達と交流、イタリア人の彼との出会い、世界各地(ブラジル、キューバベトナム、シリア、沖縄など)を移りながらシングルマザーとして一人息子を育てる、など著者の生き方はバイタリティそのもの。

人生の節目に出会った本は、安部公房三島由紀夫ガブリエル・ガルシア=マルケス百年の孤独)、マヌエル・プイグ(蜘蛛女のキス)、手塚治虫つげ義春高野文子と幅広い。

元々幼少の頃から本好きであったこそ、知的好奇心が絶える事がなかったとも言えるけれど、読書による「頭の中の旅」に留まらず実際に国境を軽々と超え生きていく著者に影響を及ぼしたのは、同じく女手一つで娘達を育てたヴィオラ奏者である、著者の母親の存在でしょう。

14歳の女の子を一人欧州へ送り出したエピソード一つ取っても、そのスケールの大きさが伺えます。理屈や固定概念よりも直感を基に決断をされてきたお母さまのよう。80歳を過ぎた今でも現役でお仕事をしているのは素晴らしいですね。

この「固定概念に縛られない」というのは最も著者に受け継がれている要素の一つでしょう。某雑誌のインタビューで、コロナ禍の現在自身は日本に住みながら、夫も子供もそれぞれイタリア、ハワイと家族バラバラに居住されているそう。これに関しても「夫婦とは言え一緒に暮らさなければいけないという事はない」「パートナーに依存しない生き方が大事」ときっぱり。

本作は波乱万丈の著者の人生に反し、途中まで押しの強さは感じられなかったのですが、最後近くで最近の(夢や希望を持たない安定志向の)若者に対し、行動や経験の大切さを説き苦言を呈するあたりで、やはり自身と比較して歯がゆいと思うのは致し方ないと感じました。

可愛い子には旅をさせよ、と言いますからね。そうそう、インタビューでは夫婦のあり方を見直す意味でも、一人で旅をしてみる事を勧めていました。コロナがもう少し収まれば、考えてみようかな…