「カラフル」

この作者が面白かったので、別の作品を…とAudibleで聞き始めると、以前ドラマ化されたのをちらっと観た記憶が。当然オチもわかってはいたのですが改めて。

「カラフル」 森 絵都 著

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生前に犯した罪によって一度輪廻のサイクルから外された「ぼく」の魂。生前の記憶は一切失っていたぼくだったが、天使業界の抽選にあたり正しく成仏できる再挑戦のチャンスを得られる。それには自殺を図った真という少年の体に「ホームステイ」しながら自らの罪を思い出すというミッションを果たさなければならなかった。

「ぼく」の魂が入り込むのは、それもどこにでもいそうな少し暗めの男の子。多少周りと協調できず浮いてしまうところはあっても、ほぼ平均的な家庭環境で育っており、母親の不倫や兄との軋轢などはあるものの、それらが自殺の引き金になるとは少し想像し難い気も。

しかし物事はいろいろ複合的に合わさって、当事者は次第に追い込まれてしまうもの。本作でも偏った見方や勘違いから生じた思い込みが、自身を追い詰めていることに気づくのですが、それが体に入り込んだ「別の魂」としての気づきである事が面白いところ。

自殺というモチーフは重いけれど、それを上回るくらいのテンポの良さは軽快でした。ラスト近く、中学生にしては少々「分別臭く」なっていくのが鼻につかない事もないけれど、人間生まれ変わると子供でもある種悟ってしまうものなのかも。

もう一つ面白いなと感じたのは、悪く見えていた父親や兄の言動は自身の誤解から生じたものであったのに対し、初恋の女の子の援助交際パパ活)や母親の不倫は誤解ではなく「事実」として設定されていた事。

「どれも全て本人の思い過ごしでした」と言うオチにするのかと思いきや、これはちょっと肩透かしでした。辛い現実もあるけれどちゃんと受け止めようね、という事でしょうか。中高生向けには酷な設定のようにも思われたけれど、案外大人よりクールに捉えているものなのかもしれませんね。