「好きな映画ベストXX」で見るとほぼ高い確率でヒットされる有名な作品。今更ですがアマプラで。
「暗殺の森」
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第二次世界大戦前夜のイタリア。幼い頃自分を犯そうとした運転手リーノを射殺してしまった記憶に未だ囚われるマルチェロ。精神病院に長く入院する父親、モルヒネ中毒の上お抱え運転手を愛人にする母親という、歪んだ環境から脱すべく、当時の波に乗るようにファシズム組織に加入、更にブルジョア家庭の平凡な娘ジュリアと結婚して「特殊ではない普通の自分」を取り戻そうとする。やがて組織からの指令で、自身の大学時代の恩師であり反ファシズム運動のリーダーであるクアドリ教授の身辺調査を任されたマルチェロは、新婚旅行を兼ねて教授とその妻アンナの住むパリへ向かう。
大した志も持たぬままに傾倒したファシズムは戦後あっさり崩壊。しかも自分の「普通ではない」生活は幼少期の「性的トラウマ」が少なからず影響されていた(と思っていた)にも関わらず、結局それも勘違いだったというオチがつき、政治的にも性的にもアイデンディティの確立されない中途半端な男を、皮肉を込めて描いた作品、というところでしょうか。
その「映像美」が特に評される本作。確かにアンナとジュリアが周囲の注目を集めながら踊るダンスシーンや、雪が残る森でクアドリ夫妻が暗殺されるシーンは、独特の映像でとても印象的ではあります。
が、凝った音楽と映像で織りなす主人公の倒錯した世界はそれなりに理解したものの、共感するところまでは難しく、個人的に「もう一回観たいな」と思うまでには至りませんでした、残念ながら。「ラスト・エンペラー」の時にも思ったのですが、ベルトリッチ監督と私、相性が悪いのかも。
ところで主人公マルチェロの監視役として組織から送られる男、どこかで見たことのある顔と思ったら、「ゴッドファーザーII」でロバート・デニーロ演じるコルレオーネが暗殺する街の顔役ファヌッチ役の俳優(ガストーネ・モスキン)ではありませんか。ゴッドファーザーの時のように途中であっさり殺られるのかな、という予想に反し結構最後まで随所に登場し、なかなかいい味を出していたのが本作の思いがけない嬉しさで、映画ってこういう楽しみもあるよな、と改めて思ったのでした。