「トリとロキタ」難民のリアルな現状を突きつけた作品

多分軽い内容では無いだろうな、と思った通り。深くて重いテーマの映画でした。

「トリとロキタ」

https://eiga.k-img.com/images/movie/97010/photo/4f3f5eda51a6e0c4/640.jpg?1674182116

映画.com

アフリカからベルギーに渡ってきたトリとロキタ。施設で姉弟として一緒に暮らしているが実は他人同士。まだ子供ながらしっかり者の少年トリは既にビザを取得済み。ビザの無いロキタはトリの姉という設定で何とかビザを取得しようと何度も面接を受けるがうまくいかない。ビザが無い為正規の職に就けないロキタは祖国にいる家族の為にドラッグの運び屋として金を稼ぐ日々。支え合って暮らす二人だが、やがて偽造ビザを入手すべくロキタは更にリスクの高い闇の仕事に手を染めていく。

主演二人を、時にアップで時に遠くから捉えるカメラは、まるでドキュメンタリーのようにリアルに難民問題の現状を映し出しているようです。

小さくてすばしっこく知恵もあるトリ。大柄でおっとりしているが精神的に不安定でパニック障害を持つロキタ。どういうきっかけで知り合ったのか詳細は省かれていますが、見知らぬ異国で互いに心の拠り所となっているのがわかります。

実の兄弟以上の繋がりの二人。願わくば貧しくても施設で幸せに…という具合にいかないリアルさを本作は観客に突きつけてきます。

大人たちに追い込まれ常に金銭的に追い込まれていくロキタ。性的な搾取にも甘んじなければならない彼女だけれど、出来る限りトリには闇の仕事をさせまいと頑張る姿は観ていて心が痛くなる思いです。

夜の街で何度も車の往来を掻い潜り道路を横切るシーンが出てきます。こんな小さな子供がお金の為に奔走しなくてはならない状況。そして非常にも彼らを利用する大人たち。施設の職員たちですらルールの範囲以上に手を差し伸べることはないのです。

ラストは決して明るいものではなく、しかも涙を誘う間も無くあっけなく訪れます。一切の奇をてらわず救いのないリアルな結末は、これが難民問題が抱える現実であり、そこから目を背けないようにとする、監督の我々へのメッセージなのかもしれません。