こちらも東京国際映画祭にて鑑賞。
「ラスト・ダンス 破・地獄」
映画.com
コロナ禍の不況により失業状態のウェディング・プランナーのドゥサンは、恋人の伝手を通じ葬儀社に転職することに。プランナーの経験を活かし新しいアイデアを取り入れてビジネスを拡張しようとするドゥサンは、旧来の道教式儀式に則った葬儀師を務める道士マンとしばしば対立。既に中年の域に達したドゥサンは恋人との関係も曖昧なままの状態。一方マンは後継者である筈の息子の力量に不満を抱き、娘には「女性は穢れた存在」として安易に道士の勤めに立ち入れさせない事から、家庭内での問題を抱えていた。
あらすじを見る限り日本映画「おくりびと」に似ているのでは?という声も(実際、映画最後のトークイベントで出演者自らそのようにコメントされていたとか)。
香港では、キリスト教形式、仏教形式と並び、道教形式で行うのが一般的とされており、この道教形式では道士と呼ばれる葬儀師が儀式を取りはからうのが特徴。故人が誤って地獄に落ちずに天国へと誘うように、(タイトルにもあるように)破・地獄と呼ばれる9枚の煉瓦を割り位牌を抱いて火を飛び越える道士の儀式はまさに舞を踊っているかのようです。
旧態然としてあくまで従来のやり方に拘るマン。しかしドゥサンのやり方が決して金儲けだけが目的ではなく彼なりに誠意をもって葬儀に向き合っていることがわかり、ドゥサンも又マンが家族との関係に悩んでいる姿を見て、お互いに理解し合うようになって行きます。
新旧の対立だけでなく、親子の葛藤や家族の在り方などを問うヒューマンドラマであるだけでなく、アジアに共通する死生観も見受けられる本作。登場人物の会話に共感させられる事もしばしばでした。
本国では、アクション映画「トワイライト・ウォーリアーズ 決戦!九龍城砦」を超えてヒットしているとか。
香港の伝統儀式に触れる機会でもある映画。日本でも一般公開されますように。
