「野獣死すべし」昭和の匂いがする映画をアマプラで

角川映画」の「松田優作」でもう一本。

野獣死すべし」(1980)

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戦場を渡り歩いてきた元通信社カメラマン伊達(松田優作)。帰国後表向きは静かに暮らしていたが、裏では警視庁警部補を殺害し拳銃を強奪、付近の賭博場を襲い暴力団員を殺害の上現金を奪って逃走。

殺害された警部補の部下である柏木(室田日出男)は目撃者情報から伊達に目をつけ尾行を開始。執拗な柏木の追跡をかわす一方で、クラシックコンサートに出向くなど優雅な日常を送りつつ密かに銀行強盗を計画する伊達。同窓会の席で知り合った男、真田(鹿賀丈史)を仲間に引き込み強盗を決行。しかし行内にはコンサート会場で出会った女性(小林麻美)も偶然客として居合わせていた。

公開当時の予告編(だったと思う)で、銀行内で銃を乱射す場面があり、実際にも確か銀行強盗事件が発生していた頃でもあり、「絶対に銀行には就職しない」と思っていた記憶が。

ストーリーとしては雑(失礼)で、戦場カメラマンとしてのトラウマによるPTSDの為残忍な事件を引き起こす、みたいな流れになっているのですが、要は「松田優作らしい狂気を孕んだ絵」が繋ぎ合わされたような印象。

銀行内で銃を乱射する、刑事相手にロシアン・ルーレットで威嚇する、自身の頭に銃を突きつけ空砲を鳴らす、などなど全て無表情(もしくは薄ら笑い)でいかにも「狂った野獣」なんですね。

有名な小林麻美が撃たれるシーンも、このシーンありきで小林麻美を出してるとしか思えない登場の仕方(というか絡みの少なさ)。確かに清楚な白いブラウスの彼女が崩れ落ちるのは美しかったけれど。

いろいろ考察されているラストは、実際に伊達が撃たれたのか、彼の妄想なのかは定かではありませんが、いずれ誰かに殺される運命を示唆する場面であるように思われます。

10㎏の減量をし、奥歯上下4本を抜き、痩せこけた顔付きにして本作に挑んだ松田優作。そのピリピリとした意気込みは画面からも伝わってきます。

原作とはかなり違うストーリーで賛否両論あるらしい本作。でもお馴染みの俳優陣がチョイ役で沢山出ていたりするのはそれなりに面白く(どう見ても無理のありそうな東大卒エリート役の岩城滉一阿藤海など)、優作ファンならやはり観ておきたい一本になるのでは。

ちなみに強盗現場になる架空の銀行(東洋銀行)は、日本銀行本店と野村證券本社ビルで撮影されたそう。これ以外にも地下鉄の駅構内や神田界隈が映っており、昭和を懐かしむ楽しみ方も。ストーリーと全く関係ありませんけどね。