「動物界」SFホラーというにはあまりに繊細なフランス映画

フランスのSF映画?殆ど予備知識なく観てみたらいろいろと新鮮でした。劇場で。

「動物界」(2024年)

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映画.com

近未来のフランス。原因不明の突然変異で身体が徐々に動物になるという病気が蔓延。様々な形の新生物と化した彼らはその凶暴性の為特別施設に隔離されており、フランソワの妻ラナもその一人だったが、移送中の事故で野に放たれ行方不明となる。一人息子のエミールと妻を探す日々のフランソワだったが、一方でエミールの体にも次第に異変が表れ始める。

平凡に暮らす家族がある日「奇病」に罹患したことによって引き離され、しかも心無い人々の偏見による差別や中傷にあう。誰がいつかかっても不思議ではない状況で焦りや不安に駆られる人々。

原因の特定できない病の蔓延する世界。動物に変異するという突拍子もない設定とはいえ、つい最近までのパンデミックの状況が容易に連想されるでしょう。

しかし「人間対異生物の戦い」という安易な図式にしないところがいかにもヨーロッパでつくられた映画。人間と動物の共存、自然への回帰、多様性の受け入れという思考や哲学が張り巡らされているのがわかります。

そして、森に逃れて生息する「鳥人間」の新生物と交流するうちに彼らに対する恐れや偏見が和らぎ、それにつれて罹患した母への理解や愛情が深まっていく息子の成長物語でもあるんですね。

森や畑の風景描写が多いせいか全体的に絵画のような印象があったのもフランス的とも言えるかも。「新生物」の描き方がいかにも「作り物」な感じもしましたが、そういうところにも現実離れしたおとぎ話の雰囲気も感じられて、ハリウッド的な作風と一線を画した感もあり、結果的には良かったかな、と。

ダイバーシティを声高にするよりも静かに家族愛を感じさせるラストに、まさかSFホラーで泣くとは自分でも意外でした。

殆どが初見のキャストの中で、唯一「アデル、ブルーは熱い色」のアデル・エグザルコプロスを認識。今回はお色気を一切封じ、逆に男性社会で孤軍奮闘する女性警官を好演しているのも個人的に必見と思われたのでした。