「ニンゲン合格」黒沢清監督の家族ドラマで懐かしい顔ぶれを見る

「CURE」が面白かった黒沢清監督。

minonoblog.hatenablog.com

同監督+役所広司コンビという事で観てみました。

ニンゲン合格」(1999年)

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/5185VASTC5L._SX92_.jpg

映画.COM

14歳の時に交通事故に遭って以来の昏睡状態から突然目覚めた豊(西島秀俊)。迎えに来てくれたのは家族ではなく、藤森という中年男(役所広司)。藤森は豊の父親の友人で、一家離散した豊の家族に代わり、豊の家の一部を釣り堀に、敷地内を産廃処理場に利用して暮らしている。やがて豊は両親や妹とそれぞれ再会するが、家族が元どおりに暮らす事は容易では無かった。

「仮死状態からの覚醒による家族の再生」がテーマなのかな、と思って観始めましたがそんなシンプルなハッピーエンドではありませんでした。

ただ、多くの人が入り混じり複雑そうに見える割りに小難しい印象がなかったのは、淡々とストーリーが進んでいるせいでしょう。

主演の西島秀俊が若い!全体的に「淡々とした」印象なのは、飄々とした彼の演技によるところも大きいでしょう。体は成人ではあるけれど中身が中学生のままである息子。いつも寸足らずのズボンを履いて「中途半端な」人間を表している様子がわかります。

「CURE」で静かな怖さの役所広司が、今回は「怪しげな仕事はしているけれど気のいいおっさん」を演じていて良い味。個人的には母親役のりりィが自然な感じで好きでしたけど。

設定としては興味深く、芸達者な人たちが入れ替わり立ち替わり現れ、これはこれで面白く観られましたが、ラストはいささか拍子抜けした感じ。

「CURE」の後に観たので、「そろそろ誰かが殺されるんじゃないか」と密かに息を潜めて観ていたせいですかね。考えすぎでした。

家族ってそんな簡単なものじゃないんだよね、とさらりとかわされたような気持ちにもなり、そう思ってみると納得する部分もある、不思議な空気感の作品でした。