「世界で一番美しいマンダラ図鑑」美しいカラーページで世界のマンダラを堪能する

カラーページの美しさに一目惚れしての衝動買いの一冊。

「世界で一番美しいマンダラ図鑑」

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マンダラは元々サンスクリット語manda(本質、心髄)+la(所有)から来ており、漢字では曼荼羅曼陀羅、漫挐羅などと表記されているようです。

そもそも仏教では開祖ブッダ以来、究極の心理は言葉や文字では伝える事は出来ないと見なされていましたが、これに対し最後発の仏教とされる密教では、言葉や文字では不可でもシンボルや図像なら可能という発想に達し、そこから開発されたのがマンダラとされています。

ここが「初めに言葉があった」「言葉は神であった」と聖書に記されているキリスト教との発想の大きな違いを本書でも指摘している点は興味深いところです。

その強い対称性と幾何学的形態を特徴とするマンダラ。密教が開発した「狭義」のマンダラでは、ここに「仏菩薩や神々の姿かシンボルの配置」「仏菩薩や神々が住む場所(宮殿)」「マンダラをみる人間がいる」という要素が加わる事で、「徹底的に聖なる領域」となり、修行や儀礼に用いられるものとなるのです。

しかし、世界には密教とは無縁の地域にもマンダラとよく似た図像が多く存在し、いわば「広義のマンダラ」としてその図像の豊かな普遍性を示していると言えるでしょう。

本書では、空海が唐から持ち帰り遂にはインドともチベットとも異なる方向へ展開した「日本のマンダラ」、インド密教の正統な後継者として聖典の記述に極めて忠実に作られた「チベットブータンのマンダラ」、真上から俯瞰する平面図のマンダラを都市部や巨大な家屋を用いて人間が具体的に体験できるようにした「立体マンダラ」、密教とは無縁の宗教や地域に伝統あるいはアートとして根付く「世界のマンダラ」の4つの観点から解説されています。

一つ一つの歴史的背景や宗教上の意味合いなどに学びながら、読み進めていくのも興味深いのですが、単純にマンダラの美しさに触れるのも楽しい一冊。

最後には、精神医学的研究の観点から、マンダラ図形の持つ「癒しの力」に注目した著者が、塗り絵という方法でその効能を紹介していて、これも面白い点です。

いつか各地の壮大なマンダラの実物を拝見できることを期待しつつ、1ページずつ楽しみたいな、と思っています。