高齢女性二人の恋愛映画を観てきました

名画座二本立てのうちの一本。フランス語っていいなぁ。意味わからなくても響きだけで恋愛映画って感じしませんか?でも本作は残念ながらセリフ少なめ。代わりに表情とか視線とか…「大人な」恋愛映画です。

「ふたつの部屋、ふたりの暮らし」

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引用:映画.com

フランス、アパルトマンの最上階。向かい合う部屋にそれぞれ一人暮らしをする女性二人。仲良しの隣人を装うが実は愛し合う恋人同士。ニナは独身。マドレーヌは夫を亡くし子供二人は既に独立。部屋を引き払い外国で一緒に暮らす計画を立てるものの、マドレーヌは子供達に自分達の事を打ち明けられずにいる。そんな中マドレーヌは急な病に倒れ会話もできない要介護の状態に。心配するあまり行動がエスカレートしていくニナ。

高齢者のレズビアンカップルのお話です。日本よりも一般的には受け入れられてそうなイメージですが、それでもシニア世代にとってはなかなかオープンにはできず、まして自分の子供に対してカミングアウトするのは更に勇気が要るでしょう。

二人で暮らす事を念頭にいつでも出ていけるようにスッキリ片付いたニナの部屋とは対照的に、いつまでも踏ん切りの付かないマドレーヌの心情を表すように彼女の部屋はいつまでも生活の匂いが感じられます。

二人の気持ちのすれ違いが見られた矢先に、脳卒中で不自由な体になるマドレーヌ。ここらあたりからニナのエキセントリックとも言える行動が始まります。合鍵でマドレーヌの部屋に(介護人がいるにも関わらず)夜中に忍び込む、「親切な隣人」を装い何とか身の回りの世話をしようとする、濡れ衣を着せて介護人を追い出す…

二人の仲を怪しんだマドレーヌの家族が二人を遠ざけようと密かにマドレーヌをホームに入れた際には、気も狂わんばかりに探し回るニナ。マドレーヌの娘たちの家まで押しかけ勢い余って窓ガラスを割るなどしてしまいます。

狂気をはらんでいくニナの様子をじっとりと追うカメラと重々しい音楽がサスペンスそのもので終始ハラハラさせるんです。

誰かが襲われるでも殺される訳でもないのに、最後まで「何だか怖い」気にさせるのはやはりこのニナの狂気を帯びた行動にあるのですが、それを静かに視線だけで受け止めるマドレーヌの表情にも狂気が見える事も大きいように思います。

恐ろしいくらいに暴走する恋人を、喜びと共に受け入れてむしろ求めている様子。愛情と狂気が一つになってより強く結び付いていく二人。静と動で正反対のように見えた二人だけれど、結局狂わんばかりに相手を求めているところはお互い同じという事でした。障壁があるほどに燃え上がるのは老いらくの恋も同じなのですね。