リストに入れていた本著、やっと読了しました。Audibleで。
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 山口周 著
引用:Amazon.co.jp
以前にこの著者は同じくAudibleで読んでおり、その時から本著は気になっていました。前回は「哲学」を語っていましたが、今回は「アート」がテーマです。
近年、大手グローバル企業が幹部候補生を名門美術学校で学ばせるなど、「アート」を重視する傾向が見られるという著者の指摘で本著は始まります。
従来であれば「戦略」「分析」「論理」などシステマティックに答えを導き出す術を身につけさせようとする、あるいはそのような人材を重視する傾向だったでしょう。MBAが良い例で大手コンサルティングであればMBA取得者が基本のようなイメージがあり、企業側を見ても欧米大手であればCEOの約4割がMBAを取得しているそうです。
しかし、そのようなコンサルが幾つも現れ一様に数値化と言語化で正解を導き出す方法を提示していくと、誰もが同様に「理性」と「論理」に基づくいわゆる「サイエンス」に則った「コモディティ化された同じ正解」にたどり着き、差別化することができないというがんじがらめの状態に陥っているのが企業の現状である、と著者は解いています。
今、時代はVUCA(「Volatility(ボラティリティ:変動性)」「Uncertainty(アンサートゥンティ:不確実性)」「Complexity(コンプレキシティ:複雑性)」「Ambiguity(アンビギュイティ:曖昧性)」)と言われているそうです。
このような不確実で変化に満ちた社会でサイエンスだけで固めた技術では戦えない、ではどうすべきか。そこで著者はアート思考で得た美意識を提案します。
実際に昨今MBAを取得しようとする人が減り、代わってMFA(美術学修士)を取る人が増えているようです。
アートや美意識というと、デザインなどクリエイティブな職業にしか直結しないイメージですが、善悪を区別する判断基準にも大きく影響する、と著者は主張します。近年コンプライアンス事案が後を立たないのは、論理や理性で築いた数値化目標を目指すあまり経営者の判断が鈍っている事も一員である、としているのです。
外から押し付けられるモノサシではなく、内なるモノサシを持つ。その為にアートを鑑賞し美意識を育み、主観や直感を磨く努力が大切である、というのが著者の意見です。
確か「武器になる哲学」でも、「改善すべき常識」と「維持すべき常識」を見極めイノベーションを導くには、哲学で得た教養が役立つと言っていました。
凝り固まった考えから解き放たれるには、一見何も関係ないように見える芸術の世界が大きな助けになるというアイデアで、日本の未来も(古来の伝統美を基に)楽観視できる可能性があるとする著者。んー、そうあって欲しいと願うばかりです。